末日聖徒イエスキリスト教会の真相|モルモン教との違いや戒律の実態
街中でスーツや白シャツにネクタイを締め、黒い名札をつけて2人1組で自転車に乗る外国人青年を見かけた経験を持つ人は多いはずです。彼らが所属しているのが「末日聖徒イエスキリスト教会(通称:モルモン教)」です。
ネット上では「厳しい戒律がある」「コーヒーを飲んではいけない」「やばい宗教なのではないか」といった疑問や噂が絶えません。世界中に1700万人以上の信徒を擁するこの宗教組織は、実際どのような教義を持ち、どのような生活を送っているのでしょうか。歴史的経緯から生活規範、国内での活動実態、脱会手続きに至るまで客観的な事実をもとに解説します。
📌 【この記事の重要ポイントまとめ】
- 要点1:「モルモン教」は一般的な通称であり、正式名称は末日聖徒イエスキリスト教会。旧新約聖書に加え独自経典『モルモン書』を経典とする。
- 要点2:コーヒー・茶・酒・たばこの禁止や収入の10%を納める什一献金は、神聖な身体管理と信仰実践を目的とした厳格な自発的ルールである。
- 要点3:自転車で活動する宣教師は完全自費のボランティアであり、脱会・退会も書面による正当な権利として制度化されている。
【基礎知識】末日聖徒イエスキリスト教会と「モルモン教」の違いとは
一般的に広く知られている「モルモン教」という呼び名は、教会が使用する経典の一つである『モルモン書』に由来する俗称です。正式名称は末日聖徒イエスキリスト教会(The Church of Jesus Christ of Latter-day Saints、略称:LDS)であり、近年は教会側も「キリストを中心とした信仰である」ことを明確にするため、略称や通称ではなく正式名称の使用を強く呼びかけています。
歴史の始まりは1830年、アメリカ・ニューヨーク州において創始者のジョセフ・スミス・ジュニアが教会を組織したことに遡ります。スミスは神とイエス・キリストの啓示を受け、古代アメリカ大陸に存在した預言者たちの記録が記された金版を発見・翻訳したと主張しました。これが『モルモン書』です。
伝統的なキリスト教(カトリックやプロテスタント各派)との決定的な違いは、聖書(旧約・新約)に加えて『モルモン書』『教義と聖約』『高価な真珠』を正典と認めている点にあります。また、父なる神、子なるキリスト、聖霊を同一の本質とする「三位一体説」を否定し、それぞれが独立した肉体や霊体を持つ別個の存在であると解釈する点も、主流派キリスト教から異端視される要因の一つとなっています。
なぜ「やばい」と噂されるのか?ネット上の評判と活動実態
検索エンジンやSNSで教会名を調べると、「やばい」「怪しい」といったネガティブな検索候補が表示される傾向があります。このような評判が生まれる背景には、主にいくつかの要因が絡み合っています。
街頭や駅前で熱心に布教活動を行う白シャツ姿の宣教師たちです。彼らは18歳から20代前半の若者が中心で、男性は原則2年間、女性は18ヶ月間、学業や仕事を休止して宣教に専念します。しかも活動費や渡航費は全額自己負担または家族の支援で賄われており、この献身性の高さが外部からは特異に映り、警戒心を抱かせる要因になっています。
過去の歴史における「一夫多妻制(複婚)」のイメージが根強く残っている点も挙げられます。19世紀の開拓期には一夫多妻制が実践されていましたが、教会は1890年に公式声明を出して複婚を完全に廃止しました。現在でも分派や原理主義グループ(FLDSなど)が独自に複婚を続けているケースがありますが、末日聖徒イエスキリスト教会本体とは一切関係がなく、現行の教会規約では重婚は即座に破門処分の対象です。
【生活ルール一覧】コーヒーやお茶が禁止される理由と健康律
教会の生活規定の中で、外部から最も驚かれるのが飲食物に関する厳しい制限です。これらは1833年にジョセフ・スミスが受けたとされる啓示「知恵の言葉(Word of Wisdom)」に基づいています。
主な禁止事項と許容されている食品の基準は以下の通りです。
【知恵の言葉による制限リスト】
・完全禁止:アルコール飲料全般、タバコ、違法薬物、コーヒー、茶(紅茶、緑茶、烏龍茶、ほうじ茶などチャノキから作られるもの)
・推奨されるもの:穀物(小麦や米)、果物、野菜、適量の肉類、十分な睡眠
・飲用可能な飲料:水、牛乳、果汁ジュース、麦茶、ハーブティー、ルイボスティーなど
コーヒーや緑茶が禁止される理由は、身体を「神から与えられた神聖な宮(器)」と見なし、中毒性や刺激性のある物質から心身を守るためと説明されています。かつては「カフェインそのものが禁止」と誤解されることもありましたが、教会は公式にコーラなどのカフェイン入り清涼飲料水を教義として禁じているわけではないと明確化しています。
飲食物以外にも、純潔の律法(結婚前の性交渉の禁止、婚姻関係の神聖視)や、日曜日は商業活動や不要な労働を避けて礼拝と家族の時間に充てる「安息日の遵守」など、規律正しい生活が信徒に求められます。
什一献金(収入の10%)の真相と教会の資金管理
信徒の義務として知られる「什一献金(じゅういつけんきん)」は、旧約聖書に登場する原則に基づき、年間の総収入(または純利益)の10分の1を教会に自発的に納める制度です。
この献金は給与から天引きされたり、外部の徴収員が強制的に回収したりする性質のものではありません。信徒一人ひとりが自身の良心と信仰に基づいて申告・納付します。ただし、神殿への参入許可証(神殿推薦状)を取得するためには、什一献金を完全に納めていることが面接で確認されるため、熱心な信徒にとっては実質的に必須の義務となっています。
集められた資金は、世界中にある教会堂や神殿の建設・維持管理、無給で活動する宣教プログラムのインフラ、教育機関(ブリガムヤング大学など)の運営、世界的な人道支援活動に充てられます。教会は大規模な投資ファンドを運用していることでも知られており、莫大な資産規模がメディアで報じられることもありますが、災害救援や貧困支援に巨額の資金を投入している側面も持ち合わせています。
著名人の信者と日本国内に存在する神殿の役割
国内外の政財界やエンターテインメント業界にも信徒や教会出身者が存在します。アメリカでは、元大統領候補で上院議員を務めたミット・ロムニー氏や、世界的ベストセラー『7つの習慣』の著者であるスティーブン・R・コヴィー氏などが著名です。日本国内でも、タレントや実業家、教育関係者の中に信徒が存在し、地域社会で活動しています。
教会施設には、毎週日曜日に誰でも自由に出入りできる「礼拝堂(集会所)」と、特別な儀式を行う「神殿」の2種類が存在します。
日本国内には以下の神殿が建立されています。
・日本東京神殿(東京都港区有栖川宮記念公園隣接/日本初の神殿として1980年奉献、大規模改修を経て運用中)
・福岡神殿(福岡市中央区平尾)
・札幌神殿(札幌市厚別区)
・沖縄神殿(沖縄県沖縄市松本)
神殿は一般的な礼拝の場ではなく、教会の規範を忠実に守っている推薦状保持者のみが入館を許される神聖な空間です。神殿内では「現世だけでなく来世まで続く家族の結び固め(永遠の結婚)」や、先祖のための代理バプテスマ(洗礼)などの特別な宗教儀式が執り行われます。
退会・脱会は自由にできるのか?正式な手続きと現実
入信したものの、生活環境の変化や教義への疑念から離脱を希望する場合、法的に脱会は完全に認められています。信教の自由が保障されている日本国内において、脱会を理由に法的な拘束を受けることはありません。
正式な脱会手続きは「会員記録の抹消(Name Removal)」という形を取ります。管轄する地元のビショップ(無給の地域指導者・司教)または教区会長に書面で退会届を提出するか、米国の教会本部に直接郵送・オンライン等で手続きを行うことで完了します。
ただし、教会コミュニティは家族単位での結びつきが非常に強く、親族全員が信徒である家庭も多いため、脱会に伴って家族関係の摩擦や孤立感に直面するケースも存在します。教義上の強制離脱ペナルティはないものの、人間関係の整理という心理的・社会的な課題が生じる事例は報告されています。
【末日聖徒イエスキリスト教会】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:なぜ宣教師はいつも自転車に乗り2人1組で行動しているのですか?
A1:新約聖書でイエスが弟子たちを「二人ずつ遣わした」という記述に倣い、霊的な支え合いと安全確保、規律維持を目的として常にペア(同僚)で行動することが規則となっています。自転車の利用は、効率的かつ低コストで地域を巡回するための実用的な手段です。
Q2:一般の人が教会の日曜礼拝やイベントに参加することはできますか?
A2:全国各地にある一般的な「集会所(礼拝堂)」で行われる日曜礼拝や英会話教室などの文化活動には、信徒でなくても誰でも無料で自由に参加できます。ただし、「神殿」と呼ばれる施設については一定の条件を満たした信徒のみが入館可能です。
Q3:入信すると私生活をすべて監視されるというのは本当ですか?
A3:組織による24時間の監視といった事実は存在しません。ただし、定期的な指導者との面談や、家庭訪問制度(ミニスタリング)、コミュニティ内での密接な交流があるため、個人のプライバシー感覚によっては過密な距離感に息苦しさを感じる人もいます。
まとめ:多角的な視点で理解する教会の現在地
末日聖徒イエスキリスト教会は、厳格な健康管理や家族観、独自の経典を持つことから、外部からは閉鎖的または特異な集団として捉えられがちです。しかしその実態は、聖書とモルモン書を基盤に強い連帯感と規律を持つキリスト教系の一教派です。
街で見かける宣教師たちの献身や、信徒たちのボランティア精神が地域社会に貢献している一方で、独自の戒律や濃密なコミュニティ文化が個人のライフスタイルと合致しないケースもあります。表面的な噂や先入観に流されることなく、歴史的背景や教義の論理を客観的に把握することが大切です。 (出典: 末日 聖徒 イエス キリスト 教会(Yahoo!ニュース))